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「それ、タダでお願いできます?」
――関わりのない代理店から届く迷惑な依頼

ある日、あなたの受信箱にこんなメールが舞い込む。

「お世話になっております。御社ブランド名を検索した際、弊社クライアントの広告が誤って表示されてしまう恐れがございます。つきましては下記キーワードをフレーズ一致で“ご除外”いただけますと幸甚です。もちろん無償でのご対応をお願い申し上げます」

──え、タダで? しかも今すぐ?

「検索」という公共の広場で競合を排除しろ? その依頼、どこまで正当性があるのか。

本記事では、この奇妙な“忖度メール”の生態を解体し、

1️⃣ なぜそんな依頼が横行するのか

2️⃣ 受ける/断るをどう判断するか

3️⃣ 真に磨くべきはクリエイティブ──という王道回帰

……を順番にひも解く。

次章から、まず「除外キーワードとは何者か」をサクッと押さえよう。

🟩除外キーワードってそもそも何者?

リスティング広告には “入札するキーワード” だけでなく “入札しないキーワード=ネガティブ(除外)キーワード” が存在する。

1️⃣役割:検索語にその語句が含まれたら広告を自動的にブロック

2️⃣本来の使い道

 ①「無料」「求人」など利益につながらない語を排除してムダクリックを削減。

 ②商品名が似ていて誤タップが多発する場合に関連性を高めるフィルターとして活用。

3️⃣設定場所:Google/Yahoo!ではキャンペーン or 広告グループ単位。共有リストにまとめれば複数キャンペーンへ一括適用も可。

つまり除外KWは〈ユーザー体験を整え、広告費を守る〉ための安全装置だ。

ところが昨今、これが**“競合よけの結界”**として悪用され始めている──というのが今回の主題。

🟩業界の悪習慣:除外メールはこうして飛んでくる

舞台は静かな月曜の朝。コーヒー片手にGmailを開く――そこへ**件名「ご協力のお願い」**が着弾する。

中身はこうだ。

至急、下記キーワードをフレーズ一致でご除外ください。<br>・◯◯サービス<br>・◯◯株式会社<br>※Google/Yahoo!/P-Max全て対象、費用は発生いたしません

ポイントは3つ

1️⃣ “お願い”と書いて命令口調……締め切りは“本日中”。

2️⃣ フレーズ一致指定で類似検索も一網打尽。

3️⃣ 「費用は発生しません」が“価値も保証しません”の裏返し。

実はこのメール、送り主の代理店が競合各社へ一斉送信しているケースが多い。なぜなら「誰かが断ったら元の木阿弥」だから。結果、忖度リストが静かに拡散し、検索市場は“見えない結界”でパズルのように区切られていく――ユーザーの知らないところで。

🟩本当に得しているのは誰? データで見る「指名KW入札 vs. 競合排除」

まず 指名キーワード(自社名・商品名)の実力を数字で確認。

調査によればクリック率(CTR)は 5〜10%、知名度が高いブランドでは15〜30%に跳ね上がる。一般キーワード(1〜5%)の倍以上だ。メディアレーダー

一方 競合のブランド名に入札するとどうなるか。

つまり 「競合名を買う → 予算が溶ける → 互いに除外を依頼」 という負のループ。

勝者は誰か? CPC上昇で手数料が増えるプラットフォームだけ――という皮肉な構図だ。

この数字を知れば、「無料でお願いできます?」メールが“お互いの財布を守る停戦提案”に見えてくる。しかしユーザーの比較検討機会は、その分こっそり奪われている。

🟩AIは忖度しない:自動最適化 vs. 「結界」設定

いまや Google Ads は ブロードマッチ+自動入札 を推奨し、検索語の類義語や誤字まで自在に拾う。ところがその“暴走”を止める最後の砦が ネガティブ(除外)キーワード だ。2024年以降、運用者向けブログは「ブロードを使うなら除外リストを常時メンテせよ」と強調する。

さらに P-Max でも ブランド除外リスト が正式機能化し、競合名をまるごとブロックできるようになった。Google ヘルプSearch Engine Land 今年3月には除外枠が 100語→1万語 に拡張され、AIキャンペーンでも人間の“NG 指示”が通りやすくなった。

要するに アルゴリズムは万能ではなく、むしろ「負のシグナル」を食わせてこそ賢く動く。だから代理店は競合名をフレーズ一致で除外させたい。――でも、その設定は誰のため? 次章でグレーな法的立ち位置を確認しよう。

🟩法・ポリシーのグレーゾーン

Google の商標ポリシーは明快だ。「商標をキーワードとして使うこと自体は制限しない」──広告文に入れるときのみ審査対象、という立場を公言している。Google ヘルプ

つまり競合名入札は公式には合法。除外を頼むメールは、法的権利ではなく“お願い”にすぎない。

それでも慣習が成り立つ理由は三つ。

1️⃣ 心理的プレッシャー:「応じないと報復入札されるかも」という暗黙の脅し。

2️⃣ 独禁法スレスレの“棲み分け”:競合排除=事実上の市場調整だが証拠が残りにくい。

3️⃣ 代理店同士のネットワーク:業界内の顔を立て合う“空気”が交渉力を補強する。

結果、ユーザーは裏側を知らないまま検索結果を見せられる。透明性を問う声が高まるのも当然だ。

🟩依頼を受けたマーケ担当が取るべき3つのアクション

① ROI を数字で試算する

Dreamdata の調査ではブランドKWの ROAS が 1,299%、非ブランドは 68%に留まった。Dreamdata

競合指名ワードで成果が出るか、まず試算してから除外依頼に応じる/断るを判断しよう。

② 合意とログを“見える化”

 ⚫除外に応じた/断った経緯を社内ワークフローで保管

 ⚫代理店には設定完了スクショ+適用範囲を必ず報告させる

③ クリエイティブを磨く

CPC が高騰しても 選ばれる広告 ならクリックは取れる。

 ⚫強みを一行で言い切る見出し

 ⚫ランディングページの訴求一致

 ⚫オファーの具体化(価格・導入実績 etc.)

除外メールに振り回される時間を、ユーザー目線の改善に充てる方が最終的な勝率は高い。

🟩まとめ & CTA

「競合を締め出すより、選ばれる広告を。」

除外キーワードは本来ユーザーと広告主双方を幸せにするフィルターだった。

それがいつしか“無料でお願いできます?”メールに姿を変え、検索市場を静かに区切っている。

私たちが取り戻すべきは、数字に裏付けられた判断と、ユーザーの選択肢。

ちょっと愚痴っぽいけど広告主自身が広告入れてて、その広告主に送ってくる広告代理店とかマーケティング会社に今後発注することはなくなる怖さは無いのかねぇ~と思う今日この頃な記事でした