中小企業のためのランサムウェア対策|被害の流れや感染経路を徹底解説
近年、企業や自治体を狙ったサイバー攻撃のニュースを目にすることが増えています。
中でも「ランサムウェア」による被害が急増しており、IT担当者がいない中小企業にとっても決して他人事ではありません。
とはいえ、「難しそうで何から手をつけていいかわからない」「専門知識がないから対策できない」と感じている方も多いのではないでしょうか。
しかし、ランサムウェアの仕組みを理解し、基本的な対策を知っておくことで、被害を防ぐことは十分可能です。
この記事では、社内セキュリティに少しでも不安を抱えている方の疑問を解消すべく、
ランサムウェアの基本から実践的な対策まで、わかりやすく解説していきます。
1|ランサムウェアとは?
ランサムウェアの定義
ランサムウェアとは、「身代金要求型ウイルス」と呼ばれるサイバー攻撃の一種です。
「Ransom(身代金)」と「Software(ソフトウェア)」を組み合わせた造語で、その名の通り金銭を要求する悪意のあるプログラムのことを指します。
ランサムウェアに感染すると、パソコンやサーバー内に保存されているデータが暗号化され、正常に開けなくなってしまいます。
まるで大切なデータを「人質に取られた」ような状態になると考えるとわかりやすいでしょう。
攻撃の目的と手法
攻撃者の目的は明確で、暗号化したデータを「復元してほしければ金を払え」と要求することです。
近年は個人のパソコンよりも、企業や自治体など組織全体を狙うケースが圧倒的に増加しています。
これは、企業の方が支払い能力が高く、業務停止による損失を避けるために身代金を支払う可能性が高いと攻撃者が判断しているためです。
実際に、業務が完全に止まってしまえば、数日間で数千万円の損失が発生することも珍しくありません。
感染の典型的な経路
ランサムウェアが企業に侵入する主な経路は以下の通りです
※詳細は、記事後半にて紹介します。
不審メールの添付ファイル
- 請求書や契約書を装ったメールに添付されたファイル
- 「至急確認」「重要」などの件名で緊急性を演出
偽のログインページ
- 正規サイトそっくりの偽サイトでIDとパスワードを盗取
- 盗んだ情報を使って正規システムに侵入
設定の甘いVPNやリモートアクセス
- リモートワーク環境の脆弱性を狙った攻撃
- パスワードが簡単すぎる、更新されていないシステム
外部アプリやクラウド設定ミス
- 権限設定が適切でないクラウドサービス
- 不正なアプリケーションのインストール
重要なのは、これらの侵入経路の多くが「人的ミス」によるものだということです。
つまり、適切な知識と対策があれば防げる可能性が高いのです。
2|典型的な被害と実際のケース
一般的な被害の流れ
ランサムウェア攻撃は、以下のような段階を経て被害が拡大していきます。
1. 感染(侵入)
メールの添付ファイルや偽サイトなどから、ランサムウェアが社内システムに侵入します。
この段階では、まだ異常に気づかないことがほとんどです。
2. 暗号化(データの人質化)
侵入したランサムウェアが、社内のファイルサーバーや各パソコンのデータを次々と暗号化していきます。
業務に必要なファイルが開けなくなり、システムが正常に動作しなくなります。
3. 要求(身代金の提示)
攻撃者から身代金を要求するメッセージが表示されます。
例えば、「データを復旧したければ○○万円を支払え」といった内容の脅迫が届きます。
4. 停止(業務の完全停止)
データが使えなくなることで、出荷管理、受注処理、顧客サポートなど、あらゆる業務が停止してしまいます。
5. 二次被害(取引先含む他社への影響)
自社だけでなく、取引先や顧客をはじめとした他社にも影響が及びます。
納期遅延、サービス停止、信頼失墜など、金銭的損失以上の被害が発生することもあります。
業務停止による影響
直近の国内でも、製造業、物流業、小売業などさまざまな業界でランサムウェアによる業務停止事例が発生しています。
ある大手製造業では、工場の生産ラインが数日間完全停止し、取引先への部品供給に大きな影響を与えました。
また、ある物流会社では配送管理システムが使えなくなり、荷物の追跡や配送スケジュールの管理が困難になったケースもあります。
重要なのは、「情報漏えいがなくても、業務が止まること自体が大きな損失」だということです。
現代の企業活動は、ITシステムなしには成り立ちません。数時間のシステム停止でも、その影響は計り知れないものがあります。
身近で発生する可能性も…
「うちはニュースになっている企業ほど規模は大きくないから狙われない」と考えるのは危険です。
攻撃者は、セキュリティ対策が手薄で、かつ業務停止による損失を避けるために身代金を支払う可能性が高い企業を狙っています。
従業員数名~数十名の中小企業でも、取引先との関係や信頼を考えると、数日間の業務停止は致命的な影響を与える可能性があります。
むしろ、IT担当者がおらず、セキュリティ対策が手薄な企業の方が、大企業よりも狙われやすいという現実もあります。
また、大企業への攻撃の入り口として、取引先となっている中小企業から感染を狙う手口もあります。
この場合、自社への被害のみではなく、気づいたら他社にも飛び火している二次被害が発生することとなります。
3|どこから感染するのか?ランサムウェアの“入り口”を知る
どんなに重厚なセキュリティシステムを用意していても、「感染の入り口」を理解していなければ無用の長物となってしまう可能性があります。
実際のランサムウェアの多くは、システムの脆弱性よりも“人の油断”から侵入してきます。
このセクションでは、ランサムウェアの「入口」を掘り下げて紹介していきます。
主な感染ルート
メール経由(フィッシング・添付ファイル)
最も多いのがメールをきっかけとする攻撃です。請求書や契約書を装ったファイルを添付し、 「至急ご確認ください」「重要なお知らせです」などの文面で開封を促します。
最近では、AIを活用して自然な日本語で作成されたメールも増え、判別が難しくなっています。
取引先経由(サプライチェーン攻撃)
自社ではなく、取引先の端末やクラウド経由で侵入するケースもあります。
「いつもやり取りしている相手だから」と安心してしまう心理を突いた手口です。
メールの送信元が正しくても、添付ファイルの開封やリンクのクリックは慎重に行いましょう。
リモートアクセスやVPNの設定ミス
リモートワークの普及で、社外から社内ネットワークにアクセスできる環境が増えました。
便利な一方で、初期設定のまま放置していたり、古いVPNを使い続けていたりすると、 攻撃者に侵入されるリスクが高まります。
「一度設定したら安心」ではないのが実情です。
クラウドサービスなどの設定不備
ファイル共有や外部連携が手軽にできる反面、共有設定を誤ると誰でもアクセスできてしまうことがあります。
「社外共有リンクが“全員に公開”になっていないか」など、権限設定を定期的に確認しておきましょう。
感染に共通する特徴
攻撃者は、“システムの弱点”よりも“人の行動の隙”を狙う。
感染直後に異常が出ないことも多く、数日〜数週間潜伏してから暗号化を開始するケースも。
一見正常に見えても、裏でデータを収集・操作していることがあります。
つまり、感染の多くは「気づかないうちに起こる」という点が怖いところです。
“技術的な防御”だけでなく、“日常的な意識”が最大の防御になります。
対策のために出来ることは…?
日々の業務の中で、どんなに気をつけていても、
「気づかないうちに入り込まれる」──それがランサムウェアの怖さです。
では、どうすれば“止まらない仕組み”を作れるのか?
日常のちょっとした習慣や、社内のルールづくりの中でも、出来る対策はあります。
詳細は別の記事でまとめているので、ぜひそちらをご覧ください。
▼具体的な対策やチェックポイントについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
最近のサイバー攻撃事例から学ぶ、企業に求められるセキュリティ対策【最新トレンド】

4|相談できる環境づくり
頼れる相談先を作る
ランサムウェア対策において最も重要なのは、「完璧な対策」を目指すことではなく、「相談できる体制づくり」です。
IT に詳しくない企業であっても、信頼できる相談相手がいれば、適切な対策を講じることができます。
社内で対策しきれない場合、抱え込まず、以下のような専門家や窓口などの相談先を作ることがオススメです。
- 信頼できる IT ベンダーや代理店
- 商工会議所の IT 相談窓口
- 警察のサイバー犯罪相談窓口
セキュリティ対策は、一気に完璧を目指す必要はありません。
大切なのは、「現状を正確に把握すること」から始めることです。
セキュリティ相談窓口では、約10分のヒアリングで基本状況をチェックできます。
「自社の課題を整理する」「何から始めるかを決める」だけでも大きな前進です。
今のままでは不安、何をしていいかわからない…
という方は、以下のフォームよりセキュリティに関してご相談いただけるので、
ぜひご活用ください。
「知ること」から始めるセキュリティ対策
ランサムウェアと聞くと、「難しそう」「自分には関係ない」と感じる方も多いかもしれません。
しかし、基本的な仕組みを理解し、できることから始めることで、被害を防ぐことは十分可能です。
重要なのは、「完璧を目指す」ことではなく、「継続的に改善していく」ことです。
今日からできる小さな対策の積み重ねが、明日の大きな被害を防ぐことにつながります。
まずは「知ること」から始めて、「相談すること」「行動すること」へとステップアップしていきましょう。
不安や悩みがあるのであれば、抱え込まず、信頼できる専門家と一緒に、自社に適したセキュリティ対策を構築していくことが、最も確実で効果的なアプローチです。
この記事が、皆様のセキュリティ対策の第一歩となれば幸いです。
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